現在、国内の漆産業では、原料たる漆の実に99・9パーセントを、中国を中心とする輸入に頼っています。その中国でも経済発展に伴って漆の生産量は減少し、また人件費の高騰により、以前は国産漆の10分の1程度であった価格が、現在では7分の1~5分の1程度となってきています。一方、国産漆も、従事する職人さんの高齢化や、若年層の後継者不足などによって年々収量が減少しています。
国産漆は外国産に比べて、光沢に優れ、硬化した塗膜はとても堅牢・強靱(きょうじん)で、古来、さまざまな建造物にも使われてきました。瑞鳳殿や大崎八幡宮をはじめ、宮城県には漆が使われた文化財が数多くあります。こうした文化財の修復には国産漆が使われます。しかし、国産漆の減少と価格の高騰がこのまま続けば、文化財の保存もままならなくなるでしょう。
国産漆の最大産地はお隣、岩手県の浄法寺町です。瀬戸内寂聴さんが一時住職をなさっていたことでも知られる天台寺のお膝元です。また、山形県ではここ30年ほどの地道な取り組みによって、良質な漆が採れるようになってきています。一方、宮城県の漆生産量はゼロです。東北一、漆塗りの文化財を数多く保有し、森林資源も豊富な宮城県で、漆が生産されていないことはとても残念なことだと思います。
その土地の木で家を建てることが木造住宅のひとつの理想である、といわれるように、その土地で生まれた漆が、その地域で使われることにはきっと意味があると思います。なにより、漆の地産地消を通して、関連産業や雇用が活性化することでしょう。
宮城大学では、本年度より民間の専門家や行政と協力して、宮城県内での漆の植樹を始めます。実際に漆が採れるまでには10~15年ほどかかりますが、植えないことには決して漆を得ることはできません。0・1パーセントのそのうちのほんの数パーセントかも知れませんが、ゼロからの脱却に向けた一歩を踏み出します。
→まちかどエッセー#8 http://kekitonji.blogspot.jp/2013/06/8.html
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